第一回:糸美屋店主 宮島一聡さん

 

『店主に聞く!』記念すべき第一回目の店主は、呉服店 糸美屋の三代目ご主人の宮島一聡さんです。
なんだか少し敷居が高く感じてしまう着物の世界を、あれこれ聞いていきたいと思います!

 

『始まりは多治見』

こんにちは。今日は宜しくお願い致します。

 

よろしくお願いします。

まずは基本的な情報を。糸美屋さんの創業は?

 

戦後まもなく、ウチのばあちゃんが岐阜の多治見で始めたので・・・もう66年になります
ね。

 

え、勝川ではなく多治見で始められたんですか?

 

ええ、そうなんです。多治見の郊外で、その頃は物資が何もかも不足していた時代なので
肌着から、布団から、端切れから、もちろん着物も、本当に何でも扱っていたようです。

 

その多治見で始めたお店を、ここ勝川に移す事になったのはどうして・・・?

 

ウチのオヤジが、京都へ修行に行って戻って来て、勝川で始めたんです。勝川のお店は
48年目になりますね。

 

お父様が勝川駅前の商店街で始められた理由というのは何かあるのでしょうか。

 

やはり、多治見よりも勝川のほうが栄えていたんでしょうね。

 

  (ここで二代目の女将さんも登場)

でも、多治見のお店が勝川に移転して来たわけじゃないんだよ。多治見は母と弟がやって
たんだから。勝川のここのお店は私の主人が27歳の時に始めたの。

今でも多治見のお店はあるんですか?
多治見店はもう閉店してから30年・・・は経つんじゃないかな。

糸美屋さんが多治見でお店を始められたというのは初めて知りました。

『糸は美しい』

次に、店名の由来をお聞きしたいのですが。

着物は“糸”から生産されるからね。糸っていうのは美しいものでしょ。その“美しい糸”から着物は作ら
れている・・・という事でね。

ばあちゃんが付けたんだよね。

 

“糸が美しい”というのはとても素敵な表現ですね。
それでは、お店のモットーやこだわっている事などありましたら教えて下さい。

モットーというのか、ウチのオヤジが決めたキャッチフレーズみたいなものが『信頼と真心」って
言います。
最近もありましたけど、振り袖を買って頂いているお客様なんですが、おばあちゃんとおかあさんが
娘の為に新しい振り袖を買ってあげたりとか、三代続けてお客様で居て頂いているというのは「信頼
と真心」があればこそだと思います。

 

そういう業種だもん、我々はね。
・・・それしかないよね。

その場限りではなく、何代も続いていくお付き合いなんですね。
今、お孫さんという話が出てきましたが、今の若い子はあまり着物を着る機会も少なくて、せいぜい
着ても浴衣くらいという子も多いと思いますが。

昔からね、若い人には浴衣から慣れ親しんでもらえればと思ってずっとやってる。着物はね、着て初
めてその良さだったり美しさが分かるもの。そうすればまた次に繋がって行く。きっかけさえあれば
ね、もっと着物に興味を持ってもらえると思いますよ。

 

 

10年程前、古着が流行った時に、若い子が例えばフリマやインターネットで500円とか1000
円で古い着物を購入したり、家のたんすからおばあちゃんの古い着物を引っ張り出して着たり・・・
なんてブームもあったんです。僕は、そういう事を通じて着物に関心を持ってもらう事もとても良い
事だと思っています。若い子だって、根っこの部分は30年前も30年後も一緒だと思うんです。
着物に対しても色々な価値観があってもいいと思いますよ。先程の古着のような価値観もあるし、き
ちんとあらたまった、礼を尽くした価値観としての着物というものもあります。そういうものは若い
人達には逆に新鮮で背筋が伸びるような、そういう良さも感じてもらえると思いますし。
だから、例えば初詣には着物を着る事もあると思いますが、本人が満足すればレンタルでもいいし、
出来上がった着物なら安く売ってるし、タンスからおばあちゃんの着物を出して来て着てもいいし、
もちろん振り袖を作って着てもいいしね。
初詣っていうのは一番着物を着やすい機会だと思うので、一つのきっかけにはなると思いますよ。

『「信頼と真心」は続く』

最後に、今後の目標などありましたらお聞かせ下さい。

突然「目標」なんて聞かれると・・・かっこいい言葉は浮かびませんが(笑)
僕はこの仕事が好きなので、ずっと同じようにしていけたらいいな、と思っています。
お客様からお聞きする話なども含めて知れば知るほど奥が深い世界なので、まだまだ面白い可能性が
あるんじゃないかなと夢は持ち続けています。

あら、まだ夢があるんだね!?

  (一同 笑)

今までのお客様とのお付き合いだったり、伝統みたいなものを守りながら新しい事にも挑戦して行く
という事でしょうか?

 

そうですね。伝統がベースの業界なので、それをもちろん大切にしていかなくちゃいけないのですが、
やっぱり“今”のお客様の生の要望を常に吸収して追求して行きたいですね。

 

今のお話を伺っていると、まさに「伝統と真心」ですね。

まあ、(父が付けた)「伝統と真心」ってあんまりカッコ良くないんですけどね(苦笑)
「そんなの当たり前の事だ」って、最初は思ってましたもん。

 

お話を伺う前は、着物の世界は敷居が高くて近づきにくいと思っていましたが、優しい口調の宮島さ
んと、気さくな女将さんのお話を伺っていると、少し敷居が低くなりました。
まずはきっかけとして“分からない事は何でも聞いてみる”というのが大事な事なのかもしれませんね。

本日はどうもありがとうございました。


【インタビュー・構成/松本純一(INMYLIFE potemkine) 撮影/山口哲(写真のヤマグチ)】

 
糸美屋呉服店
(いとみやごふくてん)
電話(0568)31-7666
愛知県春日井市旭町1丁目27
営業時間 AM 9:30-PM 8:00

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