第十回:鳥丸フードサービス 小柳出和文さん

 

『店主に聞く!』第10回目の店主は、鳥丸フードサービスのオーナー社長、小柳出和文(おやいでかずふみ)さんです。小柳出さんは、6年前に(株)鳥丸フードサービスを創業され、とりまる勝川駅前店を皮切りに、現在勝川で3店舗、春日井・名古屋で5店舗の合わせて8店舗を運営されている方です。今回はその創業に際しての思いやこれまでの出店の経緯について貴重なお話を聞くことができました。

 

勝川との「ご縁」

本日はよろしくお願いします。小柳出社長が最初にお店を出されたのは、勝川の人情屋台と聞いていますが、何年前ぐらいのことでしょうか?


 

丁度9年前ですね。

 


 

そこで何年か下積みを積んでから、「とりまる」を立ち上げられたんですね。最初はお一人でやっていらしたんですか?

 


 

いえ、実は人情屋台でも人を使って何店舗かやったりしていました。とりまるを出したのが今から6年前ですから、3年間ぐらいですかね。

 



 

じゃあ、最初から他店舗経営をされていたんですね。すばらしい。
小柳出さんは以前は大手の居酒屋チェーンで店長をしていたことがあるととりまるさんのホームページにあったのですが、そこでの下積みを積んでから独立して初めて勝川で人情屋台を始められたということですね。それからしばらくはあちこちの人情屋台で人を使ってお店をやっていて、3年後に満を持して名実ともに自分のお店を持たれたのが「とりまる勝川駅前店」だったわけですね。
勝川にお店を出そうと思ったそもそものきっかけというのは、何だったのでしょうか?


 

創業というところもありますし、HPにも書かせてもらったんですけど、勝川にすごく応援してくれる人がたくさんいたんですね。結構最初からお店やるんだったら勝川でやろうと決めてました。


 

小柳出さんは勝川ご出身なんですか?

 

いえ、僕はもともと伊豆の出身なんです。
 

あ、そうなんですか。じゃあ、人のご縁で導かれて勝川に来たっていうことですね。

 

居酒屋チェーン店で働いていたときも、もともとの勤務地は岐阜だったんですね。岐阜の求人誌を見ていてたまたま人情屋台のオーナーさんが勝川でやらないかっていう募集を見かけたのが最初のきっかけです。そのときまでは勝川という地名を知らなかったのですが、そんな流れで(笑)

 

はじめはたまたま何も知らないで勝川に来て、それから人情屋台を通じて勝川でいろんな人との出会いがあって、人脈ができたということなんですね。

 

そうですそうです。

 

人情屋台からスタートして、小柳出さんと同じように独立してお店を持たれる方は結構多いんでしょうか?

 
実際あんまりいないみたいですね(笑)
結構年配の人が多いんですよね。60歳とか。

 
ということは、あんまり若い人向きの創業支援のための場所ではない?

 
そうですね、脱サラした年配のサラリーマンとか。
僕が入ったときは、僕以外で一番若い人は50歳ぐらいでしたから。
僕だけ20代で、「珍しいね」なんて言われながらやってました。
店を出そうと決めたとき、たまたま勝川に物件があったということもあるのでしょうか?

 
そうですね、最初は小野町のほうに店が決まりかけていたんですよ。で、出勤途中たまたま勝川商店街を歩いてたら、靴屋さんが閉店セールやってるのを見て、飛込みで「おじさん、お店辞めるの?」みたいな話をして、そしたらその話をSさん(地元で有名な世話好きおじさん)が大家さんにつないでくれて根回しをしてくれたんです。
 

地域への思い・人材育成について

とりまる一号店が出来て、すぐに1年目か2年目には2号店が出来ていたような気がするんですが・・・
 

鳥居松に2号店を出したのは1年半ですね。

それはやっぱり1号店が評判が良くて自然な流れでということなんですか?

 
そうですね。商売的にうまくいったというのもあるんですが、(勝川の)商店街が良かったんですね。なんていうんだろうな、なんか普通の商店街とは違う雰囲気というか。
商店街を手助けしたいとか、地域の活性化に役立ちたいとかそういう思いもあってのことだった?

 
そんなおこがましいつもりは全くなかったです。
むしろお客さんが飲みにきてあちこちで吐いたりして商店街を汚して怒られてばっかりいるんですけど、夜の街が明るくなって、以前はスプレーでいたずら書きされたりというのも無くなったし、すごく歩きやすくなったとか、賑やかになったとかいう声もよく聞くようになって、あ、自分のお店もちょっとはこの商店街の役に立っているんだなと感じ始めたら、またそういうことをしてみたくなって、やっぱりこの次も商店街だということで、鳥居松商店街にお店を出させていただきました。
 

それであえてシャッター商店街に入っていったんですね(笑)

そうそう、飛び込んでいったという(笑)。でもあっちはちょっとこっちと雰囲気が違ってましたね。でも若い人がいたら「一緒にやりましょうよ」って声はかけるようにはしてます。
 

じゃあ店長さんや店員さんもその場でスカウトとかあるんですか?

そうなんです。本当に求人したことがないぐらいで。お客さんが息子にアルバイト行ってこいとかね。そのアルバイトさんが社員になって、「僕、いずれ店長になりたいです」とか。そんな感じで自然に人が集まってくるんです。

 

「人を育てる」ということに何か特別な思いがあるのでしょうか?
 

従業員教育とかどうやってんの?とかよく聞かれるんですが、まったくないです(笑)


 

よく居酒屋というと、「朝礼」やったりとかありますよね。
 

僕も朝礼やっている最近はやりの元気のいい店に勉強のために見に行ったことはあるんですが、やっぱり「僕はいいや」って(笑)。
自分がやる気になったときにスイッチが入るから、自分がやる気がないとき、乗ってないときに無理にはね。楽しいなって思ってもらって長く続けてもらうことだけを考えて、なんかのきっかけでスイッチが入ったときグッと伸ばせればね。

 

自分から無理にスイッチを入れにいこうとはしないわけですね。

 

あんましないですね(笑)
なんかこう、ぐいぐい引っ張っていくというリーダーシップみたいな、そういうのは僕には無いです。
 

そういう独自のやり方で、肩肘をはらずにやって来たのが却ってよかったのかも知れませんね。
 

これでよかったのかどうかは分かりませんけど。Sさんなんかにはよく怒られますよ。「店長もっと厳しくやんなきゃだめだ!」って。

 
でも、そういうことを言ってくれるお客さんって、ありがたいですよね。
 

異業態への挑戦と名古屋への進出、そして原点回帰へ

で、その次が「とんまる」でしたっけ?
 

そうです。そこはもう半年ぐらいで。
 

すごい早い出店ペースですよね。
 

となりがたまたま辞めるという話だったんで・・・
 

だったら空き店舗にしておくのは忍びないということで?

とりまるが結構狭いのでそんなにたくさんの人数を集められなくて、ちょっと10人集まると貸切みたいになっちゃってたんで、
もうちょっと広げたいなとおもったところにたまたま隣が空いたんで、これはチャンスだ!と。
 

でも、普通だったら一つの業態で成功したら、それをそのまま他へもっていってそのまま同じ業態でやっていくのが一般的だとおもうのですが、
あえて、業態を変えて、真隣に新しく出店するというのは珍しいのでは?

それが人情屋台方式なんですよ。人情屋台って、6軒の店が並んでて、お客さんはそれぞれの店に着くんだけど、注文はどの店からも取れるという方式なんです。

人情屋台から発想を得て、これなら行けるんじゃないかと?
 

ええ、とんまるという豚肉料理のお店と、焼き鳥屋さんとが隣同士なんだけど、料理はどっちでも食べれるよっていうのを。裏口同士が繋がってるんで、リレー方式で料理を運んでるんです。実は店員さん自体も貸し借りしてて、こっちが忙しいよっていったらヘルプに来てもらったりして。
それでまたお客さん結構喜んで好評だったんで、今回新たに同じ方式であそこの店(韓まる)を近くに開いたわけです。今度は何か違う雰囲気のことをやりたいと思って、じゃあ、今度は韓国料理だって。

 

韓まるで勝川は3店舗目になるわけですが、それは勝川という地元に拘って、勝川を拠点として固めたいということなんですか?
 

(そういう気持ちは)やっぱありますね。
 

とりまる2号店の次はどちらでしたっけ?
 
とりまる2号店の次は、そこでちょっと調子に乗って(笑)、名古屋進出しました。それが名駅の近くの国際センター前の納屋橋店です。
 
で、いまや8店舗ですよね。もう破竹の勢いで。納屋橋の次は?
 

大曽根(徳川店)ですね。で、桜山店、金山店、そして最後が韓まるですね。

 

店舗はご自分で探して積極的に出店されるんですか?それともたまたま空き情報が来て出店を検討するのでしょうか?
空いている情報は沢山入ってきますが、そこから選別して決めるような感じですね。
でも名古屋に出てから、そこでちょっとブレましたね。きっと。名古屋に行ったときに、今までとはやり方が違うなというのはありましたね。

名古屋に出てから、何かを変えたとか、変わっちゃったということがあったんですか?

 

なんかこう、「商店街を」みたいな気持ちで人通りの少ない商店街に出店するのと、初めから人通りの多い繁華街に出店するのとでは全然違いましたね。
成程。で、ぶっちゃけどっちが儲かるんでしょうか?
でも、勝川が一番いいですよ。売上額で言ったら名古屋の方が大きいんですが、家賃とか広告費とか出ていく分も大きので。そもそも名古屋に出したのはそれまでとは理由が違うんですね。
人から頼まれたというのもあるんですか?
それはあんまりないですね。名古屋に出て有名になっちゃおうかなとか思ったりして、ちょっと調子に乗ってましたね。で、そんなに無茶無茶うまく行かなかったんですね。
で、もう1回原点に戻ろうということで考え直して、間をちょっと空けて、満を持して韓国料理の店「韓まる」を出したんですね。
成程、原点回帰ですね。ちなみにお店のネーミングに全部「まる」がついているのは何か謂れがあるのでしょうか?
とりまるを作ったときに、結構みんなで名前どうしようってあれこれ考えたんですけど、いまいちいい名前がでてこないんで、でもやっぱり焼き鳥屋さんっていうのがぱっと分かったほうがいいだろうということで、シンプルに「とりまる」でよくない?って僕が決めたんですよ。
   

創業の精神を忘れずに

とりまるさんのホームページに「素直な心で最善を尽くす精神」というのが創業の精神として書いてありますね。
そうそう。それが一番いいですね。自分に自信がないのがコンプレックスで持ってて、逆に自信が無いのが強みになるのかなと。お客さんが「こういう店がここにあったら便利なんだけど」とか「こういう店が欲しい」という声を聴いて、「成程なぁ」と。そしてそこから研究していくんですよ。
それが結局一番喜んで貰えるんで。喜んで貰えることが一番嬉しいですよね。
そうなるともっと(お客さんの要望に応えて)やろうと思いますよ。
その精神がサービス業の基本なのかもしれませんね。基本なんだけど、なかなか難しい。俺はこう思うとか、変にこだわりを持っちゃうとなかなかできない。
とりまるさんは勝川を皮切りに8店舗も店を出されて、勝川きっての成功例と言っていいと思うのですが、今振り返ってみて成功の秘訣は何だったとお考えですか?
何でしょうね。それこそ、創業の精神といいますか、謙虚に感謝というか、人のご縁ですかね。
僕なんか、ホントに人のご縁だけで繋がってきたというか、元々知り合い一人も居ないところからスタートしてるんで、点と点が繋がって線になっていったというか。まあ、元々調子に乗りやすいタイプなんで調子に乗らないようにやっていくことかなと、思います。
お話を聞いていても本当に謙虚な方だなと思うんですが、8店舗も店を率いるオーナー社長と思えないくらい(笑)最初は失礼ながら「社長はどこですか?」って聞いてしまいそうになりました。社長らしい格好とかオーラというか、あえて出さないようにしているというのはあるんですか?
そんなことないですよ。自分でやったことも無いですしね。みんな周りがやってくれて教えてくれて。大手のチェーン店で修行したといっても、こんなこと言ったらアレですけどね、パックをじょきじょきっと切って、ピッとやったら出来上がっちゃうようなそういうお店だったんですよ。あそこ(人情屋台)で焼き鳥屋をやったときも、お肉を切って串に刺して炭を入れて焼くなんてやったこともなかったですから(笑)
じゃあ、周りを見て見様見真似で?

そうそう、いろんなところアルバイトしにいきながら、いろんなお店を見ながら、「あ、こうやってやるんだ」っていって。
で、ご迷惑かけながらも10件ぐらいいろんな焼き鳥屋さんをやって辞めてやって辞めてっていうので1年ぐらいやって、で、人情屋台をやったんですけど、それでも上手にならなくて、そこへ居酒屋さんで店長をやっている方が飲みに来て、「なんだ、これ不味いな」って言われたんですよ。

そこで「不味いのは分かっているんで、どうしたら美味しくなるのか教えてください」って言ったら、その店長さん飲みに来ているのに厨房まで入ってきて、「こうやってやるんだよ」って教えてくれて、「へー、そうやってやるんだ。うまいもんですね」なんて教えてもらいながらやってたんで(笑)、最初の半年間ぐらいなんてお金貰っちゃいけないぐらいのことやってたんですけど。

でもみんながそれを面白がってね、「俺が教えてやる」みたいな。
「あそこの店にこんなのがあるからお前行って勉強して来い」なんていわれて次の日行って勉強してきて、「行ってきました。あれおいしいですね」なんていいながら、「でもどうやって作るか分からないんです」って言ったら「今度あそこの店長連れてくるから教えてもらえ」なんて。スタートしたときはそんなんばっかりでしたよ。無茶苦茶ですね(笑)。

そうやって周りの人に助けられた恩を今返しているという感じでしょうか?
返せればいいですけど、まだまだ全然ですね。商店街の人にも本当に可愛がってもらって。
ちなみに商店街の3店舗とも空き店舗対策の補助を受けられてるんでしたっけ?
いえ、とりまるは受けていませんが、とんまると韓まるは受けてますね。
やっぱり空き店舗の補助があるからここに店を出したというのは大きいのでしょうか?
大きいと思います。
   

今後について

これからの事業展開についてお伺いします。今後勝川でまた手ごろな空き店舗が出てきたら、積極的に出店をお考えですか?
ちょっと考えてます。今後は、名古屋も行くかもしれないですけど、最初のところをぶれないようにやっていこうと思って。
結構JCなんかも一生懸命やってたりするんで、まちづくりにも関心はあります。JCも賛否両論ありますが、やっててやりがいもあるし楽しいんですよ。
なんか春日井を盛り上げたいなと思っちゃいますね。
つまり、原点としての地元重視でやっていこうと。何か具体的な計画があるのでしょうか?
具体的にはまだ無いんですが、よく聞く話としては、「勝川にラーメン屋さんがあるといいね」という声はよく聞くんですよ。
最後に、何か抱負みたいなものがあればお聞かせください。
自分の勉強だと思ってますし、もっともっと食に対してはお客様の「こうだったら、ああだったら」という要望がかなうような、飲食のドラえもんのような存在になれたらいいですね。
今日はいろいろといいお話をありがとうございました。
   
 

~編集後記~

「とりまる」の存在は、今や名古屋圏の飲食業界では知らない人がいないと言っていいほど有名になりながら、これまで社長の存在感はお店の知名度程ではないというのが偽らざる感想(失礼)でしたが、今回小柳出社長の素朴で謙虚なお人柄に触れて、何故ここまでとりまるが成功したのかが分かったような気がします。

改めまして小柳出社長には貴重なお時間をいただいて取材にご協力いただいたことに謝意を表します。ありがとうございました。



【インタビュー・構成/松浦成隆(弘法PCサロン)  撮影/山口 哲(写真のヤマグチ)】

 

とりまる 勝川駅前店

【DATA】

 電話 0568-35-5022

春日井市旭町1-1-3

営業時間 16:00~05:00 (年中無休)

 

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